うた

日詩

空き地

いつも通る道に大きな空き地ができている

ぽっかりと開けた空を見上げながら

私は首をかしげる

はて…ここには何があったかしらん

毎日とおっていた道なのにどうしても思い出せない

 

しばらくすると剥き出しだった土に雑草が生い茂り

すずめたちはかくれんぼする遊び場ができたと喜んでいる

だぶん そこははじめから空き地だったのだ

 

空き地の前には古びたバス停が立っていて

見知らぬ人同士が黙ってバスを待っている

トロイメライ

下り始めた 坂道から 見える

滲んだように 光る雲

秋に向かう空 傾きかけた陽の光を受けて 

シューマンの トロイメライが 流れる

 

あの雲は きっと むかしむかしの あの日の私

あの雲は たぶん ずっとあしたの いつかの私

消えていく雲 過ぎ去った日々と 出会いと別れの 面影

 

下り始めた 坂道から 見える 宵の街灯り

シューマンの トロイメライが 風を受けて流れていく

消しゴムからの一筆

その日の夜に書いた たった1行の日記を

ま新しい消しゴムの まっ白なカドで 丁寧に消して

ノートを閉じる

 

さあ ねむっちまおうと 部屋の灯りを消すと

満月だったらしく 月明かりが差し込んで

がらんとした部屋の中で 突っ立っている私が

さっき書いた日記の1行みたいに浮かび上がる

 

なんだ こいつめ まだ消えないで 燻ってやがる

と思ったら 胸の奥が チクリとなりやがったんで

あわてて 消しゴムみたいなベッドに もぐりこんだ

そらの おどりこ

あいつら ずいぶん うかれてやがる

うれしいんだ あさが

うれしいんだ よるのあけていくのが

きもちいいんだ よあけのかぜが

おおぞらの まんなかを ひとりじめして

とんで はねて きりきりまいして

にくらしいほど あいらしい あいつら

よあけの そらの おどりこたちは

みなみのそらに むかって

きっと あいさつをしているんだな

もうすぐ そちらにむかいますよ

もうすぐ たびだちのときですよって

どこかの つくえの ひとりごと

今週のお題「私のデスク」

 

さよなら わたしの だいすきなひと

であったころは あんな ちいさかったのに

いまでは わたしが こんなに ちいさい

 

きょうかしょとか ノートだけじゃない

だいじな たからものも あずかっていたっけ

らくがきされたり けとばされたりもしたけれど

ずっと いっしょだった きみ

 

きみが とおくにいくなんて おもってもいなかった

わたしは いっしょにいけないんだね

 

さよなら わたしの だいすきなひと

であったころは あんな ちいさかったのに

いまでは わたしが こんなに ちいさい

 

おもいでが ほしのように またたいている

きみが とおく たびだつひ

わたしは おもいでの こばこになる

ああ

ああ もう 人生は ああ だ

ああ ああ 言って 日は過ぎて

ああ ああ あ〜あと日が暮れる

ああ ああ あ〜あと床につき

それでも ああまた 日が昇る

やれやれ あ〜あと 窓あけて

鳥がなくよに ああ と なく

空に向かって ああ と なく